序説

立花隆氏の連載『私の東大論』は、当時の文藝春秋を眼にする機会がある度に読んでいた。外国在住だった事もあって、毎月読めてはいなかったし、読めた内容を本格的に批評する時間的余裕や、知識的意欲も、当時は欠けていた。立花氏の論説をまとまった形で手にしたのは、『天皇と東大』と題されて出版された後である。前々から蓑田胸喜に興味があった私は、題名に惹かれて、その中の第三十八章「狂信右翼・蓑田胸喜と滝川事件」を真っ先に読んだ。過去に読んだ記憶は薄れていたので、初めて読むのと同然であった。

そこで私の目を引いたのは、2点。一つは、立花氏が、蓑田による「大げさな傍点」(文字の横に強調用につけられる●等)に満ちた誌面を見て(本に於いて掲載(下の画像参照))、特段「異様」だとわざわざ形容した事。(これについては後述する。)もう一つは、蓑田の遺族の抗議によって、○によって伏せられた章末の諸文句の内容。後者については、大宅壮一文庫で確認したところ、○○○○○は全て、「真正の狂人」。○○は、「狂死」。その他、その項目の題名が、雑誌では「狂気蓑田はいつから狂ったか」であったのが、本では「黒板に蓑田狂気と落書き」に変更。


しかし、「狂気の証拠」、「狂気の一つの徴候」、「狂気を感じとっていた」、「本当に狂ったとしか思えない行動」、「いつから狂ったのか」、「赤狩り狂奔の時代からすでに狂っていた」、「日本の狂気の時代は、この狂気のイデオローグによって推進された時代だったのである」、と言う記述は放置。(そもそも、維持された章名の「狂信」から「狂気」まで大した距離は無い。)

最終項目において、立て続けに狂気を無駄なほど強調したのは、内容上の必然であるより、多分に、「狂気の時代は」云々と言う決め文句でこの章を締めたかったが故であろう。脆弱な根拠に、勘違いな思い込みを重ねて、疑惑の推定を断定へと持ち込む、悪徳検察官並の「絵」(青木雄二・前田恒彦)の書き様だ。しかし、「死者をリアルな存在として知っている人」である遺族に抗議されたので、「その認識に異を立てて争おうとは思わない」と言って、狂気断定を「不適切な表現であったとして」「取り下げ」た。が、良く見ると、立花氏が取り下げたのは、疎開から自決の間に関する狂気の記述でしかない。「赤狩り狂奔時代から」疎開時までの狂気断定は維持した。何たる欺瞞。

そもそも「日本の狂気の時代」、と言う一種の文学的表現が暗示する意味とは、その時代を担った日本人全てが狂気だった、と言う事である。言わば、それに対して蓑田を狂気とみなせば、当時の日本もしくは日本の権力潮流においては、蓑田は普通だった、と言う事でもある(普通もまた、狂気と共に、不明瞭な用語である事は勿論)。が、立花氏の文学的表現による個人史の冒瀆は、そう言う用語の局所的な逆転解釈だけでもって済ますべきものでは無い。立花氏の蓑田の誤評と無理解は、蓑田一個に留まらず、蓑田が体現した日本の或る文化と歴史の流れに関する誤評と無理解である。そこで、立花氏の無智愚論を解明する事をキッカケに、蓑田胸喜の思想と言動を遡源する。蓑田青年が育った明治や大正前期への旅でもある。今の日本の理解を深めんが為、過去の理解を深めたい。

2010年12月5日日曜日

存命時系(H23.01.15更新)

(H23.01.15更新)
シェイクスピア    (1564~        1616)
林羅山 (天正11年(1583)〜明暦03年(1657))
林鵞峰(元和04年(1618)~延宝08年(1680))
山崎闇斎(元和04年(1619)〜天和02年(1682))
山鹿素行(元和08年(1622)〜貞享02年(1685))
伊藤仁斎(寛永04年(1627)~宝永02年(1705))
貝原益軒(寛永07年(1630)〜正徳04年(1714))
契沖   (寛永17年(1640)~元禄14年(1701))
林鳳岡(寛永21年(1645)~享保17年(1732))
佐藤直方(慶応03年(1650)〜享保04年(1719))
浅見絅斎(承応元年(1652)〜正徳元年(1712))
新井白石(明暦03年(1657)〜享保10年(1725))
三宅尚斎(寛文02年(1662)〜元文06年(1741))
荻生徂徠(寛文06年(1666)~享保13年(1728))
荷田春満(寛文09年(1669)~元文元年(1736))
太宰春台(延宝08年(1680)~延享04年(1747))
賀茂真淵(元禄10年(1697)~明和06年(1769))
安藤昌益(元禄16年(1703)~宝暦12年(1762))
カント       (1724 〜      1804)
村田春海(延享03年(1746)~文化08年(1811))
塙保己一(延享03年(1746)~文政04年(1821))
ゲーテ       (1749 〜      1832)
佐藤信淵(明和06年(1769)~嘉永03年(1850))
平田篤胤(安永05年(1776)~天保14年(1843))
頼山陽(安永09年(1781)~天保03年(1832))
ショーペンハウアー (1788 〜      1860)
箕作阮甫(寛政11年(1799)〜文久03年(1863))
横井小楠(文化06年(1809)〜明治02年(1869))
マルクス      (1818 〜      1883)
ツルゲーネフ   (1818 ~      1883)

箕作秋坪(文政08年(1826)〜明治19年(1886))
西村茂樹(文政11年(1828)〜明治35年(1902))
西周  (文政12年(1829)〜明治30年(1897))
津田真道(文政12年(1829)〜明治36年(1903))
中村正直(天保03年(1832)〜明治24年(1891))
江藤新平(天保05年(1834)〜明治07年(1874))
福沢諭吉(天保05年(1835)〜明治34年(1901))
加藤弘之(天保07年(1836)〜大正05年(1916))
クロポトキン    (1842 〜      1921)
新島襄 (天保14年(1843)〜明治23年(1890))
井上毅 (天保14年(1843)〜明治28年(1895))
大井憲太郎(天保14(1843)〜大正11年(1922))
ニーチェ      (1844 〜      1900)
箕作麟祥(弘化03年(1846)〜明治30年(1897))
中江兆民(弘化04年(1847)〜明治34年(1901))
森有礼 (弘化04年(1847)〜明治22年(1889))
矢野竜渓(嘉永03年(1851)〜昭和06年(1931))
那珂通世(嘉永04年(1851)〜明治41年(1908))
菊池大麓(安政02年(1855)〜大正06年(1917))
頭山満 (安政02年(1855)〜昭和19年(1944))
田口卯吉(安政02年(1855)〜明治38年(1905))
穂積陳重(安政03年(1856)〜大正15年(1926))
富井政章(安政05年(1858)〜昭和10年(1935))

坪内逍遥(安政06年(1859)~昭和10年(1935))
穂積八束(安政7年(1860)〜大正元年(1912))
三宅雪嶺(万延元年(1860)〜昭和20年(1945))
梅謙次郎(万延元年(1860)〜明治43年(1910))
内村鑑三(万延02年(1861)〜昭和05年(1930))
森鴎外 (文久02年(1862)〜大正11年(1922))
朝比奈知泉(文久2年(1862)〜昭和14年(1939))
新渡戸稲造(文久2年(1862)〜昭和08年(1933))
黒岩涙香(文久02年(1862)〜大正09年(1920)
二葉亭四迷(元治元年(1864)~明治42年(1909))
伊藤左千夫(元治元年(1864)〜大正02年(1913))
白鳥庫吉(元治02年(1865)〜昭和17年(1942))
呉秀三 (慶応元年(1865)〜昭和07年(1932))
狩野享吉(慶応元年(1865)~昭和17年(1942))
内藤湖南(慶応02年(1866)〜昭和09年(1934))
柳原極堂(慶応03年(1867)~昭和32(1957))
夏目漱石(慶応03年(1867)〜大正05年(1916))
一木喜徳郎(慶応3年(1867)〜昭和19年(1944))
幸田露伴(慶応03年(1867)~昭和22年(1947))
正岡子規(慶応03年(1867)〜明治35年(1902))
平沼騏一郎(慶応3年(1867)〜昭和27年(1952))

+++明治元年~45年   (1868~1912)+++

北村透谷(明治元年 (1868)〜明治27年(1894))
徳富蘆花(明治元年(1868)〜昭和02年(1927))
大町桂月(明治02年(1869)〜大正14年(1925))
レーニン      (1870 〜      1924)
西田幾多郎(明治3年(1870)〜昭和20年(1945))
高山樗牛(明治04年(1871)〜明治35年(1902))
高野岩三郎(明治4年(1871)〜昭和24年(1949))
国木田独歩(明治4年(1871)~明治41年(1908))
幸徳秋水(明治04年(1871)〜明治44(1911))
佐々木信綱(明治5年(1872)~昭和38年(1963))
与謝野鉄幹(明治6年(1873)~昭和10年(1935))
河東碧梧桐(明治6年(1873)~昭和12年(1937))
美濃部達吉(明治6年(1873)〜昭和23年(1948))
姉崎正治(明治06年(1873)〜昭和24年(1949))
津田左右吉(明治6年(1873)〜昭和36年(1961))
高浜虚子(明治07年(1874)~昭和34年(1959))
桑木厳翼(明治07年(1874)〜昭和21年(1946))
黒板勝美(明治07年(1874)〜昭和21年(1946))
柳田國男(明治08年(1875)~昭和37年(1962))
長谷川如是閑(明治8(1875)〜昭和44年(1969))
長谷川天渓(明治9年(1876)〜昭和15年(1940))
波多野精一(明治10(1877)〜昭和25年(1950))
吉野作造(明治11年(1878)〜昭和08年(1933))
有島武郎(明治11年(1878)〜大正12年(1923))
牧野英一(明治11年(1878)〜昭和45年(1870))
佐々木惣一(明治11年(1878)〜昭和40年(1965))
上杉慎吉(明治11年(1878)〜昭和04年(1929))
吉田茂 (明治11年(1878)〜昭和42(1967))
スターリン     (1878 〜     1953)
与謝野晶子(明治11(1878)~昭和17年(1942))

正岡藝陽(明治14年(1881)〜大正09年(1920))
斎藤茂吉(明治15年(1882)〜昭和28年(1953))
橋本進吉(明治15年(1882)~昭和20年(1945))
北一輝 (明治16年(1883)〜昭和12年(1937))
松村武雄(明治16年(1883)〜昭和44年(1969))
三井甲之(明治16年(1883)〜昭和28年(1953))
鳩山秀夫(明治17年(1884)〜昭和21年(1946))
永田鉄山(明治17年(1884)〜昭和10年(1935))
荻原井泉水(明治17(1884)~昭和51(1976))
東條英機(明治17年(1884)〜昭和23年(1948))
天野貞祐(明治17年(1884)〜昭和55年(1980))
田辺元 (明治18年(1885)~昭和37年(1962))
塚本虎二(明治18年(1885)〜昭和48年(1973))
大川周明(明治19年(1886)〜昭和32年(1957))
萩原朔太郎(明治19(1886)〜昭和17年(1942))
藤村操 (明治19年(1886)〜明治36年(1903))

第五高等学校(明治20(1887)〜昭和25年(1950))
中塚一碧楼(明治20年(1887)~昭和21年(1946))
大内兵衛(明治21年(1888)〜昭和55年(1980))
小泉信三(明治21年(1888)〜昭和41年(1966))
森戸辰男(明治21年(1888)〜昭和59年(1984))
末弘厳太郎(明治21年(1888)〜昭和26年(1951))
河上丈太郎(明治22(1889)〜昭和40年(1965))
石原莞爾(明治22年(1889)〜昭和24年(1949))
南原繁 (明治22年(1889)〜昭和49年(1974))
田中耕太郎(明治23(1890)〜昭和49年(1974))
滝川幸辰(明治24年(1891)〜昭和37年(1962))
近衛文麿(明治24年(1891)〜昭和20年(1945))
芥川龍之介(明治25(1892)〜昭和02年(1927))
三枝博音(明治25年(1892)〜昭和38年(1963))
矢内原忠雄(明治26(1893)〜昭和36年(1961))
*蓑田胸喜(明治27(1894)〜昭和21年(1946))
フルシチョフ    (1894 〜      1971)
平泉澄 (明治28年(1895)〜昭和59年(1984))

牧野信一(明治29年(1896)〜昭和11年(1936))
岸信介 (明治29年(1896)〜昭和62年(1987))
三木清 (明治30年(1897)〜昭和20年(1945))
佐々弘雄(明治30年(1897)〜昭和23年(1948))
向坂逸郎(明治30年(1897)〜昭和60年(1985))
我妻栄 (明治30年(1897)〜昭和48年(1973))
奥野信太郎(明治32(1899)〜昭和43年(1968))
川端康成(明治32年(1899)〜昭和47年(1972))
細川隆元(明治33年(1900)〜平成06年(1994))
稲村順三(明治33年(1900)〜昭和30年(1955))
尾崎秀実(明治34年(1901)〜昭和19年(1944))
坂本太郎(明治34年(1901)〜昭和62年(1987))
小林秀雄(明治35年(1902)〜昭和58年(1983))
林房雄 (明治36年(1903)〜昭和50年(1975))
吉川幸次郎(明治37(1904)〜昭和55年(1980))
貝塚茂樹(明治37年(1904)~昭和62年(1987))
太宰治 (明治42年(1909)〜昭和23年(1948))

久野収 (明治43年(1910)〜平成11年(1999))
鈴木善幸
田畑茂二郎(1911~2001)
レーガン(        1911~       2004)
岡本太郎(1911~1996)
児玉誉士夫(1911
中村元(1911
瀬島龍三(1911~2007)
武田泰淳(1912)
高橋義孝(1912)
福田恒存(大正元年(1912)~平成06年(1994))
阿川弘之(大正09年(1920)~)
三島由紀夫(大正14(1925)~昭和45年(1970))
(当分、徐々に拡充する予定。誤記があれば、気づき次第、知らされ次第、修正します。)